夜の新宿の雑踏から聞こえてくるのは、不愉快なキャッチセールスの声、酔っ払ったサラリーマンの愚痴、韓国・中国あたりの異国の言葉・・・
ボクのipodからは、カーティス・フラーの「ファイブ・スポット・アフター・ダーク」が流れてきた。
そのトロンボーンの音は、そんなボクのいるアジアの欲望が渦巻く場所をニューヨークに変える。
電車の中、歌モノが聴きたくなり、菊地成孔の「Chansons extraites(de Degustation a Jazz)」を選ぶ。
ミュージカルを思わせる高揚感のあるサビが、車内をシアターに変える。
ケータイゲームに興じるサラリーマン、疲れて浮かない顔のOL、出来の悪そうな浪人生・・・
自分が今感じていることを必死で書き留めようとしているボクは、さしずめ売れないシナリオライターといった役どころか。
すべての人間が、何らかの役を演じているのだ。
でも、その中に主役はいない。
オフィスから自宅までの45分。
ちょうど、CMを除いた60分ドラマといったところか。
出来は・・・テレビが垂れ流す三文ドラマと比べると、まあ、悪くない。
明日のボクは、どんなシナリオで、どんな役を演じるのだろう・・・
音楽が世界を変えるなんて、そんな大それたことなんか、なかなかできやしないけど、自分の目の前に広がる世界を変えることなんか、音楽の力でカンタンにできてしまうのだ。
目の前に広がるリアルな世界と、そのリアルな世界を見てボクが創り出す虚像の世界。
リアルとヴァーチャルの境界があいまいになっている現代、どちらが正しく、正しくない、なんてことはないのかもしれない。
Apple iPod nano 2GB ホワイト [MA004J/A]
ブルースエット
カーティス・フラー
Chansons extraites(de Degustation a Jazz)
菊地成孔